2002年に購入し、24年間元気に動いていたNational製のオーブンレンジがついに壊れました。
電源を入れても、何の反応もありません。
一先ず分解してみました。

レンジの下側です。
右下に見えるのが吸気穴でしたが、ここに油交じりの埃が大分張り付いていました。(写真を撮る前に掃除してしまいました。)
後で分かった事ですが、これが今回の故障につながった可能性が高いと思われます。

背面のカバーを開けたところです。
庫内に向けて穴が開いていて、ここから庫内の食品温度を監視しています。
この機種は赤外線センサーによって、食品の温度を検知する方式になっています。
ステッピングモーターで左右に首振りする様になってます。
冷却風のダクトは、この庫内温度センサーを冷やすために底面のFANから誘導されている様です。
その他には、オーブン用の石英管ヒーターの熱を庫内に誘導するための、
くまとりコイル型FANモーターが付いてます。

斜め下側から見た図です。

板金のトップカバーを外した図です。
前面扉から向かって右側に、扉の開閉検知のスイッチと、庫内照明用ランプが付いています。

左サイドには、冷却風循環のためのガイドが付いているだけでした。
下側から吸い込んだ空気でマグネトロンを冷却し、その冷却風の一部がダクトを通って庫内側へ導かれる構造になっていました。
天面側には、カーボンヒーターパネルが一面に付いています。


下面を外すと、いよいよ制御基板が見えてきました。
メイン制御基板が中核部品となります。
制御基板にAC電源は入っているのですが、基板上の電源部で12V、5Vが出力されていませんでした。
初めは、この電源部が故障したとばかり思っていました。
もっと分解して、後で分かったのですが、下図の温度ヒューズが切れていたのが、今回の故障の原因でした。

メイン制御基板を取り出して、テスターで探りを入れてみましたが、
この時は、壊れていると思い込んでいて、真面目に回路を検証しませんでした。
直らないと判断し、どんどん分解を進める事にしました。

天板の下には、カーボンヒーターが配置されています。
板金でカシメられているので、壊さないとたどり着けません。

天板の隅に、温度センサが配置されていました。
このセンサの温度が高い時は、電子レンジが動かせない仕様になっています。

電子レンジのマイクロ波を発生させるマグネトロンです。
マグネトロン内部では、電子を電界と磁界によって制御し、内部の共振空洞で約2.45GHz帯のマイクロ波を発生させます。
発生したマイクロ波はアンテナから導波管を通って庫内へ導かれます。
庫内ではマイクロ波が金属壁で反射するため、場所によって加熱されやすい場所・されにくい場所が生じます。そこで、この機種では金属製の羽根をモーターで回転させ、庫内の電磁界分布を変化させることで、加熱ムラを抑える構造になっています。
ずっと、マイクロ波は上側から庫内へ照射されていると思っていましたが、実際にはこのような構造になっていました。


下記は、下面のセラミックプレートを外したところです。

内側の鉄板フレームだけになりました。

次は前面扉の分解です。
内側のカバーを外しても汚れがあるだけで、何もありませんでした。

操作スイッチ類の基板は、前面からアクセスする様です。
化粧フィルムを剥がすと、ネジ類が見えて、基板を外せました。


底面部のFANモーターです。

FANの裏側は、ひどい汚れでした。
このFANの風は、電子レンジ部品冷却の生命線なので、とても重要です。
この吸気口をこまめに掃除するだけで、寿命は格段に伸びそうです。

マグネトロン用の高電圧を発生する電源基板です。
ケースの裏は今までの汚れがたまってて、大いに錆びていました。
でも基板側には汚れが来ない様に設計されています。

高圧基板に載っていた、サンケン電気製のダイオードです。
型式:UX-C2B、耐圧8kV品です。

下記はマグネトロン 2M261 の定格データです。
https://microwavetrade.com/wp-content/uploads/2022/09/2M261-M32-Specification.pdf
- アノード電圧 ebm: 4.45kV
- アノード電流 lb: 300mA
- 出力: 960W
- 周波数: 2460MHz
- フィラメント電圧:3.3V
- フィラメント電流:10A
BluetoothやWi-Fiなどでも利用されている2.4GHz帯に近い周波数ですね。
高圧で真空管内で加速された電子が共振空洞で電磁エネルギーを発生し、2.46GHzの電波となって放射されるという仕組みの様です。
本当は、もっと高い周波数の方が電磁波の水分への吸収効率は良いのですが、国際的に定められたISM(Industrial, Scientific and Medical)バンドを使うため、電子レンジは基本的に2.45GHzを使う事になったそうです。
電子レンジの仕組みとは?加熱の原理や基本構造を解説|電気と磁気の?館|TDK Techno Magazine

これが今回電源が入らなくなった故障の原因である、温度ヒューズです。
定格180℃、15A品です。
一度所定の動作温度に達して切れると、温度が下がっても自動復帰しないため、部品交換が必要になります。
温度が上がると、バイメタル式の丸いチップの凹みがパチっと反転し、真ん中の白い部分を押し、そうすると接点がOPENになってしまいます。
バイメタルは、常温にもどっても再反転しない設定で、永久故障となります。
冷却風の、マグネトロンの冷却フィンを通った後の流路にこれが設置されていました。
マグネトロンの発熱がどれ位か見てみます。
- マグネトロン消費電力 = 4.45kV*0.3A + 3.3V*10A = 1368W
- 熱損失:1368W - 960W(定格出力) = 408W
- 出力効率 = 960W / 1368W = 70.2%
408Wというと、結構な発熱量ですね。
吸気口がホコリや油汚れで塞がっている中で、電子レンジを連続使用したため、異常高温になってしまったと思われます。


最後に、電装部品だけをフル接続し、切れた温度ヒューズ部を短絡接続し、動作させてみました。
結果、問題なく動作しました。
早くに温度ヒューズ切れに気づいていれば、修理出来たと思うと非常に悔しいです。
今回の教訓です。
電気製品の故障修理時、まず第一に電気的なヒューズだけでなく、温度ヒューズをチェックする事。
※電子レンジ内部を分解する人、高電圧で感電しない様、十分注意してくださいね。
長々と見てくれた方、ありがとうございました。^^
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